Ⅰ
ある古い屋敷に、二匹の猫がいました
屋敷には誰も住んでいません。
いつから猫だけになったのかはだれも知りません。
ただ、ひっそりと猫だけが暮らしていました。
猫たちは今の暮らしに不満はありません。
屋敷にはネズミも沢山います。食べものには困りません。
屋敷は立派なので寒くて凍える事もありません。
生きていくうえで困ることは何一つなかったのです。
Ⅱ
そんな猫たちにはお気に入りの部屋がありました。
主人が一番長く居た部屋。
それは書斎でした。
書斎で本を読みながら主人はいつもこんな事を言っていました。
「ここにある、たくさんの本たちは知識が詰まっている。」
「ここにある、たくさんの知識は読む人にとって最高の道具となりうる」
「ここにある、たくさんの知識は何か困った時必ず道を開いてくれる。」
「ここにある、本は未来を掴んでいる。」
Ⅲ
ある日、平和な猫たちの生活に陰りが出てきました。
ねずみの数が減ってきているのです。
日々、たくさんねずみを獲る事もせず、
いつも通り生きているのに、こんなにも不安なのだろう。
なにも贅沢していない。現在の生活が維持できればそれで良いのに。
猫たちはぼんやりと思いました。
数日が経ち、猫たちは考えました。このまま贅沢しなければ食糧はまだ底を尽きません。
でも、必ず終わりはやってきます。
それまで手をこまねいて傍観するだけでしょうか。
いよいよ明日ねずみがいなくなるときに慌てふためくのでしょうか。
Ⅳ
猫たちはふと主人の言葉を思い出しました。
「ここにある、たくさんの知識は読む人にとって最高の道具となりうる」
本です。本の知識を得て、今の生活をより良いものにするのです。
もしかしたら、ここよりもっとネズミが捕れる場所があるかもしれない。
もしかしたら、この家が世界のすべてでは無いのかもしれない。
そう考えました。
時間は限りがあります。なにもしなければ食糧が無くなっておしまいです。
猫たちは書斎に向かいました。自分の知識という武器を手に入れるために。
生きるための道具を手に入れる為に。
書斎につくと、一冊の古い洋書が机の上にありました。
主人の読みかけの本だったかもしれません。
猫たちは祈りました。
すると古い洋書は光り輝き、自ら開きました。
古い洋書はMacBook Airになったのです。
おしまい。